本研究は、文化・歴史社会学的手法を用いて、日本における人体模倣の技術、思想、「もの」それ自体(人体模型・マネキン・フィギュア・人間型ロボット・等身大人形など)の変遷、さらにそれに対する人々の違和感、および共感を考察するものである。そして本研究では、人体模倣を人体模型という理科や医学教青の世界、マネキンというファッションの世界、さらには生人形という人体模倣の日本における原初形態ともいうべき技術など、横断的かつ歴史的に捉え直した。フィールドワークも重視し、史資料にとどまらない厚みをもった研究を展開した。 本年は、大宅壮一文庫をはじめとする専門図書館での文献研究はもちろんのこと、フィギュアでは海洋堂の博物館、人体模型では京都科学、ロボットでは産業総研など関係博物館や会社の調査および東京の秋葉原、中野などのフィールドワークを行った。そして、人体模倣が真に迫ることによって生じるある種の不気味さ(通称不気味の谷)を、さまざまな分野の人が意識的に回避し「キャラクター」的にずらす、あるいは、不気味さそのものを売り物にするなどの行為を行っていることを見出した。 研究発表としては、主たるものとしては「リアルをこえて-人体模倣はどこへ向かうのか-」国際日本文化研究センターの共同研究会で、2006年5月13日に口頭発表を行った。 文字媒体の発表は、京都大学出版会からの叢書の論文として掲載される予定が、締め切りが1年のびた。また、日文研での共同研究の書籍へ投稿も求められており、2007年度中の締め切りになる予定である。
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