本研究の目的は、アメリカ合衆国(以下、米国と記す)において様々な高齢者団体・組織からの要求や異議申し立てとそれに対応する当該政府の政治的判断・選択・交渉を通じて形成される<高齢者医療福祉制度>をめぐる政治を構築主義の視点から読み解きつつ、米国の高齢者はいかにして諸制度を利用し、またそれらが人々の語りによって表象されているのかを明らかにすることを通じて「米国の高齢者医療福祉制度における老いと死をめぐる表象の政治」を解明することである。 平成19年度においては、米国においてインテンシブな調査研究ならびに研究報告を行なった。また、平成17年度・平成18年度に引き続き、米国ならびに日本における高齢者医療福祉制度に対する社会政策に関する資料分析を中心に進め、広範な先行諸研究の文献研究を行った。その具体的成果としては、第一に、研究の認識論的ベースを確定するにあたり、老いの哲学的・倫理学的研究を行なった。実際に、日本倫理学会第58回大会シンポジウム「老い」にてシンポジストとして報告したところである。その成果も『倫理学年報』で報告した。第二に、米国における老いの倫理や政策をめぐる議論を踏まえつつ、2006年10月29日に開催された第25回日本医学哲学・倫理学会大会のシンポジウムの報告の成果として『医学哲学 医学倫理』に論文としてまとめた。上記以外にも上記のような老いをめぐる倫理学的研究を下地に幾つかの論文を報告しており、現在、その集大成として米国における高齢者医療福祉政策をめぐる老いと死をめぐる表象の政治学をまとめているところである。
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