平成19年度については、以下の2点から研究実施計画をすすめた。 研究計画の第1点目として、平成17年度からひきつづき実施していた、ソーシャル・インクルージョン対象者、具体的には「ホームレス」を対象とし、聞き取り調査を継続実施した。具体的には、1)「ホームレス」脱出者におけるその後の居住における聞き取り調査、と2)「ホームレス」に対する居住支援を実施している支援団体や行政への聞き取り調査である。 1)においては、平成18年年度に実施していた、「ホームレス」脱出者における聞き取り調査の概況をまとめた。 2)においては、本年度、和歌山市において、同市の市営住宅を2戸、自立支援住宅として優先入居させ、半年間の間に、自立支援のフォローアップを行うという取り組みがみられた。これは、和歌山市の住宅管理課とホームレス支援団体(NPO法人和歌山ホームレス支援機構)の協働の取り組みとして実施されたものであり、地方都市における居住支援のありかたの新たな方向性を示したものである。この事業の取り組みについて、行政と支援団体双方に、その実施状況の現状を課題を聞き取り調査した。行政と市民団体の協働における居住支援のありかたという意味での、十分な示唆を得ることが可能になった。 研究計画の第2点目として、ホームレス以外の他のソーシャル・インクルージョン対象者における居住支援を中心とした、自立支援方策について、ホームレスの自立支援方策と比較してどのような点に相違点があるかを検討した。具体的には、ネットカフェ難民などの典型的にみられる不安定雇用の若者たちと、同じく不安定雇用により居住を中心とした自立支援が安定しないひとり親家庭(特に母子家庭)の世帯についてである。この点については、当初の実施計画には含まれておらず、研究の進捗状況からあらたに検討する必要性にせまられたものである。この点についての詳細な研究は、次年度以降の課題としたい。
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