昨年度は主に、研究実施計画に示した通り、ホームレス問題や貧困・社会的排除論に関する先行研究成果のサーベイを目的として、国内外の文献の渉猟およびサーベイを行った。そうしたサーベイによって得られた知見について、総合的な整理にはいまだ至っていないものの、個別的な研究成果の例でいえば、貧困・社会的排除に関する国内文献の書評や海外資料の翻訳・紹介を昨年度に発表することができた。また、本研究における貧困・社会的排除への対策の観点について、社会的包摂という特殊概念に立ち入る前段階の作業として、福祉政策一般の歴史および先行研究を対象とした検討結果について、いくつかの学会や研究会で発表し、複数の論文にまとめて発表した。今年度は、昨年度以降の先行研究成果の渉猟・サーベイ作業を継続しつつも、これまで収集したホームレス調査のデータ解析への方法・内容面での適用あるいは貢献を積極的に意識した研究を進める予定である。 また昨年度は、年度を通して様々な学会や研究会に参加したことによって、情報収集や意見交換などの研究交流を活発に進めることができた。なかでも、大学院生時代から指導を受けてきた共同研究者らによって開催されている研究会は、社会的排除とコミュニティケアの調査研究をテーマとしており、本研究の目的・内容との密接な関連においても、この研究会に定期的に参加できた意義は非常に大きい。昨年度に参加した学会・研究会においては、本研究のいくつかの成果について複数回の発表の機会を得たのみでなく、本研究のテーマに関わる調査研究や実践をめぐる最新情報の収集や意見交換を進めることができた。
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