2003年12月、ドイツの失業扶助法および連邦社会扶助法において制度改正が行われた。具体的には、社会扶助法を稼働能力がない者のみに限定し(SGBXII)、従来の失業扶助および社会扶助を受給していた就労可能な要扶助者に対する「求職者への基礎保障」(SGB II)という新たな制度を創設するというものである。 本研究は、これらの改革の枠組みと問題点、具体的には、従来実施されていた稼働能力を有する者に対する所得保障および就労支援がどのように変化するのか、とりわけさまざまな生活課題を抱えるホームレス状態にある者に着目し、これらの改革がホームレス支援システムに与える影響について詳細な分析を行う。初年度は、ドイツの法改正の状況について現地ヒアリングおよび文献研究を行なった。あわせて日本のホームレスと自立支援の状況についても整理を行ない、学会発表を行なった。 ホームレス支援にかかわって、法改正によるいくつかの課題を確認することができた。第一に、SGB IIでは、「6ヶ月を超えて入所施設に入居している者または老齢年金を受給している者は、本編に定める給付を受けない」と規定されており、稼働能力ある者はSGB IIの対象とされながら、ホームレス施設に6ヶ月以上入所している場合にはSGB IIの対象外とされる矛盾した取扱いとなっている。第二に、従来の社会扶助では、立ち退き訴訟が係属されたときに裁判所から福祉事務所に通報することによって、住宅喪失が未然に防ぐことが可能であった。しかし、新たなSGB IIでは、裁判所から福祉事務所への通報が明文化されていないこと、またSGBXIIでは、「家賃滞納が訴状の内容から見て賃借人の支払能力を理由とするものでない場合は、転送はおこなわない」という規定が新たに追加されている。このことが、従来の予防システムにどのような影響を与えているのかは次年度以降さらに検討する。
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