本研究では、高齢者の福祉用具の利用後の変化を介護支援専門員にフィードバックすることを念頭におきつつ、福祉用具に対するモニタリング支援が、福祉用具の継続的な利用、あるいは新たな福祉用具の利用など、その後の利用に与える影響について明らかにすることを目的としている。本年度は福祉用具を利用した後に焦点をおき、福祉用具の利用にかかわる問題や福祉用具に対する利用者の満足度の実態について明らかにし、福祉用具に対する満足度に影響する要因についても検討した。 その結果、福祉用具の導入前だけでなく導入後においても福祉用具の利用に関連して何らかの問題を抱えている障害者の存在が明らかとなった。特に、福祉用具の導入前に問題を抱えていた利用者に比べ、導入後に問題を抱えている利用者の方が多く、導入後に問題があったことは福祉用具に対する不満とも関連していた。こうした福祉用具を利用した後の問題は非常に複雑で個別性の高いものであるが、それ故に福祉用具の満足度への影響は大きく、利用者の満足度を向上させていくためには、福祉用具の導入後の影響に関する知見を集積することが必要である。 また、今回の結果から、福祉用具の満足度が高いことと福祉用具の利用を決定した人が利用者本人であることの間に関連傾向が見られた。このことは、上述のような福祉用具の導入に向けた支援あるいは導入後の問題解決のための支援を考えるとき、専門職者からの一方向的な支援だけでは十分ではないことを示している。今後は、福祉用具の支援における利用者の意見を反映した枠組みの構築を目指しつつ、福祉用具を利用した後の支援が福祉用具に対する態度や満足度、さらには生活全体の満足度に対してどのような影響を及ぼすのかについても詳細に検討していくことが課題である。
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