平成17年度の研究では、デンマークに渡航し、認知症コンサルタントとして働く専門職からのヒアリング、および認知症コンサルタントを養成する学校でのヒアリングと養成カリキュラムモジュールの情報収集、テキストの資料収集を行った。その結果、現在日本で紹介されている認知症コンサルタントは、認知症コーディネータと混同しており、正確に紹介されていないことが明らかになった。また、老年学研究所では、デンマークで取り組まれている最新のデイホーム事業についての説明を受けた。従来、認知症ケアでは、なじみの関係、環境を変えないといったことが大前提となっていたが、デンマークでは認知症ケアには正しい知識と対応の仕方を学んだ専門職であれば、同じ専門職が常に関わるという方針を持たなくても問題が無いことが明らかにされている。また、walk&talkの取り組みが効果をあげており、心地よい運動とおしゃべりが生活のリズムを作り出すということが現在確認されているところであった。 一方で、日本の研究では認知症を子どもがどう理解するのか、また高齢者とのふれあいがどの程度あるのかを明らかにするために、ある学童保育に通う小学校1〜6年生の児童を対象に8月にヒアリング調査を行った。その結果、子どもたちの行動圏域はおよそ1.5kmで、日頃高齢者とともに暮らしていない子どもは、高齢者と話す機会や会う機会も無いことが明らかになった。そのようななかでもつ子どもの高齢者に対するイメージは非常にネガティブなものが多く、高齢者といえば杖をついて弱いというものだった。また、死んでいく人という非常に悲観的な見方もあった。このようなことから、認知症の理解という以前に、高齢者や年をとるということの理解が非常に偏っていることが明らかになった。高齢者のイメージ先行の理解を変革していく取り組みからはじめることが認知症という病をどう理解させるかにつながると考えられるため、今後、そのプログラム開発も視野に入れた取り組みが必要だと示唆された。
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