今年度は、研究計画にそって必要な調査、研究が遂行できた。 具体的には、ローカルコンパクトの協議の開始から成立、そのインパクト、今後の課題という一連の過程について、協議開始のきっかけ、策定プロセスに影響を及ぼす要因、策定後のプロセス、成果について、イングランドの2つの都市(クロイドン市、リュイシャム市)で調査を行った。 今回対象とした自治体は、自治体とボランタリーセクターの間の関係を改善し、具体的にルールを規定するものとしてコンパクトを両セクターが評価している自治体と、コンパクトそのものは存在していても、大きなインパクトはない、と評価する自治体という対照的なケースであった。 コンパクトの存在を両セクターの関係を変化させるツールとして有効ではないと評価する自治体における両セクターの代表者が指摘していたのは、コンパクトは「約束」に過ぎず、ルールを規定するものであるから、「あったほうがよい」が、「何かを変えるツール」ではないという点であった。当該自治体の公私関係は良好であり、両者の協働、パートナーシップはさまざまな形で進められている。公私関係を変化させるツールとしては、コンパクトよりも、具体的な予算を伴った「政策」を実施していく段階での交渉におけるコミュニケーションが重要であるというのが、ボランタリーセクターの代表者の意見であった。 他方で、コンパクトの存在を評価する自治体のほうは、コンパクト自体は、大きな第一歩であり、両セクターの対話が継続していることを両セクターの代表者が評価していた。しかしやはり、ルールは、ルールであり、ルール作りそのものが目的ではないことも強調されていた。 いづれにしても、両者のパートナーシップは、何らかの対話の継続が重要であることが確認できたが、そのツールはコンパクトだけではないということも明らかになった。こうした結果を踏まえて、他の自治体における調査を継続したい。
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