本研究では、(1)離転職経験者による離転職理由に関する自由記述データの分析、(2)自由記述データと量的データそれぞれの分析結果の比較検討、(3)離転職経験者へのインタビュー調査を行い、介護職者の仮説的離転職モデルを構築を目指した。 まず、昨年度実施した質問紙調査で得た、離転職経験者から得た離転職理由に関する自由記述データ(言語データ)を形態素毎に分解し、形態素の出現パターンをコレスポンデンスアナリシスとクラスター分析により検討したところ、「人間関係の葛藤」、「待遇への不満」、「施設のサービス方針との不一致」、「体力・精神の消耗」、そして「結婚・出産.育児」の6つの離転職要因を見出した。 言語データの分析結果と昨年度実施した量的調査から得たデータを分析した結果を比較検討したところ、言語データ分析の結果からは、女性職員について「体力の限界」と「結婚・出産・育児」が固有の離転職要因として見出される一方、「人間関係の葛藤」、「待遇への木満」、そして「施設のサービス方針との不一致」については、量的データ分析の結果と一致していることが判明した。 離転職経験者9名に対して半構造化面接を行い離転職に至るまでのプロセスを回想させたところ、「人間関係の葛藤」、「待遇への不満」、そして「施設のサービス方針との不一致」の3要因の他に、(1)新たな資格取得を機に転職した事例、(2)大学卒業資格を持つ者で入職後1年以内に指導的立場に任命されその重責に耐えられず離職した事例、そして年齢20代の若い介護職員3名については(3)現在の職場以外(他の施設)で経験を積み上げたいという動機が高まり離転職した事例が見出された。 以上を総合すると、介護職者の離転職行動には「成長欲求に対する満足感」、「人間関係に対する満足感」、「待遇に対する満足感」、「施設の方針に対する満足感」、「新しい資格取得」、「体力・精神の消耗感」が影響していると考えられる。女性についてはさらに、結婚・出産・育児等ライフイベントも含まれる。
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