高齢者福祉施設で働く介護職員の離職率が20%を超える現状を緩和するためにも、離・転職行動のメカニズムの解明は急務である。そこで本研究では、先行研究群にして示されている離職あるいは職場に滞まるという行動を最も説明するとされる離・滞職意向の因果モデル、加えて、仮に現在の職場を離職しても同じ職種の仕事を希望するかその意向について平成17年度に近畿某県にある90の介護老人福祉施設で働く職員を対象に行ったアンケート調査の回答者のうち介護職員1155名(男性:208名 女性:935名 不明:12名)のデータに共分散構造分析を施し検討した。結果、現在の職場に滞ろうとする「職場継続意向」には「成長満足度」「施設の方針に対する満足」「同僚との人間関係に対する満足度」「利用者との関係に対する満足度」「待遇に対する満足度」が有意に影響していることが判明している(なお、独立変数間は複雑に関連しあっている)。例え、現在の職場を辞めても次も同じ介護職に就こうとする「職種継続意向」には「成長満足度」「利用者との関係に対する満足度」「待遇に対する満足度」が有意に影響していることが判明した(なお、独立変数間は複雑に関連しあっている)。「職場継続意向」には研究者が仮定した独立変数がほぼ全て影響している。「職種継続意向」については、現在勤めている施設とは独立して介護職そのものの評価と関連する「成長満足度」「利用者との関係に対する満足度」「待遇に対する満足度」のみが影響していることが判明した。給与等待遇改善のみならず高齢者福祉施設の人材マネジメント方法の刷新を要請する結果となった。
|