研究概要 |
本研究では、昨年度収集した手話通訳映像のうち、より日本語に忠実な訳出を行っているもの、文章の流れをわかりやすく整理しているもの、手話として意味の通じやすい文章に意訳しているものをそれぞれ1例ずつ取り上げ(サンプルA,B,C)、客観的尺度および主観的尺度の両方を用いて評価を行った。 研究1 サンプル映像の客観的評価 サンプル映像を訳出の量的側面、変換作業、訳出された手話表現の3つから分析を行った。各サンプル映像の特徴を量的側面、変換作業、訳出された手話表現の3つの側面から分析したところ、訳出語数についてはA149語、B133語、C176語とCが最も多かったが、訳出率はいずれも95%程度で同等であった。日本語から手話への変換作業については、図1に示すようにAは64.1%が同等であったが、BはAに比較して言い換えや圧縮・統合の出現回数が多かった。Cは圧縮・統合や付加、言い換えの出現回数が多く、同等が少ないことから、かなり意訳的な訳出を行っていることがわかった。手話表現においては、図2に示すとおり辞書系以外の出現数に違いが見られ、特にCは類辞による表現が多数用いられていた。またロールシフトによる文レベルの圧縮も多数使用されている点で特徴的だった。 研究2 サンプル映像の主観的評価 作成したサンプル映像を、T大学で学ぶ聴覚障害者46名に提示し評価を行った。評価はそれぞれのサンプル映像に対する総合的評価を5段階評定で回答させた。 各サンプル映像のうち、もっとも自分の期待を満たしていると考えられるサンプル映像としてはCと回答した学生が多く、20名がこのように回答していた。同様に、Bに対する評価も高かったが(17名)、Aと回答した学生は9名と少なかった。各サンプルに対する総合評価は、Bに対するものが3.8ともっとも高く、次いでAとCが3.3と同様の結果を示した。このことから、Cに対しては強く評価をする学生が多くいるが、この表現があわないと考える学生も少なからずおり、全体的に評価の高い表現としてBがあげられることが明らかになった。
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