介護サービス事業者を取り巻くリスクのうち、最も発生頻度の高いリスクは、転倒、転落、誤飲・誤嚥、感染症等の介護行為に起因するリスクである。 本研究では、介護サービス提供場面におけるインシデント・アクシデント発生状況及び関連要因等を定量・定性分析によって明らかにし、サービス提供時に発生するさまざまなリスクを軽減、回避するための事故防止策を検討する。また、専門職及び学生のリスクアセスメント能力を高めるための「危険予知訓練プログラム」を開発し、その導入効果を検証する。 研究目的を達成するために、初年度はリスクマネジメントに関する基礎的な文献研究と資料整理による知見の整理・考察を行った。また、訪問介護事業所、介護老人福祉施設等に対してヒアリング調査を実施し、各施設(事業所)における危機管理体制の整備状況やリスクマネジメントを推進する際の阻害要因等について検討した。その結果、多様な就業形態、不規則な勤務時間が教育研修の機会の設定を妨げる要因の一つになっていることが明らかとなった。 さらに、本年度は、平成18年度実施予定の量的調査の準備作業として、既存の事故報告書等を参考にインシデント・アクシデントレポートを作成するとともに、認知症高齢者グループホーム700施設に対して研究の趣旨や研究方法を記した依頼文書を送付した。 なお、来年度は、認知症高齢者グループホーム等においてインシデント・アクシデントデータを広く収集し、介護サービス提供場面における潜在的リスクの発見及びインシデント発生に関連する背景要因を定量・定性分析によって明らかにする予定である。
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