本研究の結果、「当事者」「家族」「地域」欄を設けた記録様式によって、介護支援と地域支援に必要な情報の蓄積が可能になった。「当事者」欄は、健康状態やADLに関する情報に留まらない。通所場面の他の認知症高齢者や職員との会話、外出先の出来事など利用中の様子を事実に基づき記述する。「家族」欄は、利用前夜の生活状況や宿泊の要望など家族支援に関する情報だけでなく、認知症の進行を感じた場面や施設の活動への関心も含まれる。「地域」欄は、医療関係者やケアマネジャーなど専門職との接点に留まらない。当事者が訪問者や外出先で人と関わった際の双方の反応、地域ケア会議など施設の地域活動のうち当事者及び家族に関する情報も含まれる。 これらの情報は、生活場面の事実に基づいているが、情報の精査や解釈には記録者の主観が伴う。そこで、記録に残す情報の精査、共有、考察の精度を高める為に、毎日、週間、月単位のミーティング(以下、MT)を見直した。その日の勤務者は、夜勤者の申し送りも踏まえ、残しておきたい出来事を終礼時に議論する。各利用者の担当は、終礼で精査された情報を週間まとめとして週間MTまでに作成する。その際、パソコンに入力された日々の記録は、自動的に週間単位に積み上げ、効率化を図る。週間MTでは、週間情報の中で議論する要素を担当が抽出し、考察と次週の暫定的な方針を提示し、議論する。月間MTでは、週間単位の考察と暫定的な方針によって見えてきた課題が、「当事者(利用者)」「家族」「地域」別にモニタリングされる。また、モニタリングされた課題は、課題分析表に即して分類され、日常生活全般の状況や課題、利用者及び家族の生活に対する意向、長期・短期の援助目標として編集され、一連のケアプロセスとなる。最後に、記録とMTの実態調査は、小規模多機能ケア施設の整備が進まず、調査実施が大幅に遅れた為、別の機会に報告する。
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