近年、児童青少年の問題行動が深刻化しており、児童青少年の問題行動を予防するために社会性を育成する必要性が指摘されている。実際に、地域や学校の取り組みも始まってきているが、問題行動を予防するために社会性のどの側面を育成することが特に求められているのか、あるいは、どのような体験が社会性の育成に効果的であるのかに関する検討は少ない。そこで、本研究では、児童青少年への社会性の問題や社会性育成の体験に関する記事を収集し、1)育成が必要と考えられている社会性の側面を整理し、2)社会性の育成に必要とされる体験の内容を整理することとした。2001年1月〜2005年12月までの最近5年間の新聞記事(朝日新聞)の中から、「社会性」「育成」に関連する86件について内容分析を行った結果、社会性については、「思いやり」「命の大切さ」「自立心」を育てる、「社会のルール」を身につける、「コミュニケーション能力を高める」、インターネット利用に関する「情報モラルの育成」が重要であることが示唆された。また、社会性を育成する体験については、「ボランティア活動」「自然体験」「社会体験(職場体験)」や、「幼保小一貫教育・中高一貫教育」といった異年齢の交流体験が重要であると考えられており、複数の地域で実践が行われていた。インターネット利用に関して、さらに、高校生・大学生を対象としてインターネット上で他者と円滑な関係を形成・維持していくために必要な社会性の側面について自由記述形式の調査を実施した結果、「言葉遣いに気をつける」「中傷をしない」「相手のことを考える」「(ネット上の)マナーを守る」といった点に加え、「すぐに返事をする」「個人情報」に配慮していることも示された。
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