研究概要 |
本研究の主な目的は以下の二つである。一つ目は,家庭防災と地域防災の促進・阻害要因について検討し因果モデルを構築すること。もう一つは,防災行動モデルに基づいた,ワークショップ・プログラムを開発し,実践することである。本年度は,リスク認知研究や,リスク・コミュニケーションに関する研究,防衛動機理論,防災に関するPrE理論などを参考にして,アンケート調査のデータに基づき,家庭と地域の防災行動に関する因果モデルを構築した。その結果,ベネフィット認知,主観的規範認知,災害への関心の三つの要因は,地域防災と家庭防災のいずれに対しても,正の影響を与えていた。また,コスト認知と社会考慮は,地域防災意図に影響を与えていた。さらに,地震リスク認知と,地震不安は,家庭防災意図に影響を与えていた。これらの結果は,尺度間相関とほぼ整合的なものであった。地域防災と家庭防災の重決定係数はいずれも高く,今回用いた変数による説明力は高かった。これらの結果から,地域における防災行動意図を高めるためには,被害予測やハザードマップの作成などのリスク情報の提供だけでは不十分であり,防災とは直接には関係のない社会考慮や地域コミュニティに対する意識を高めることが重要であることが示唆された。また,ベネフィット認知は,地域防災にも家庭防災にも影響を与えていたため,防災のベネフィット情報の充実が必要であることが明らかになった。 また,ワークショップ・プログラムを開発のために,地域防災活動に蓄積のある神戸市内の防災福祉コミュニティの活動についての資料収集を行い,その特徴について検討を行うとともに,若い人々の災害に対する想像力の実態を把握し,評価するためのパイロットスタディを行った。なお,これらのデータは現在分析中である。
|