本研究では、流域環境の自然科学的評価と社会経済的評価を相互にフィードバックさせ、専門家(科学者)と一般住民が相互に学びあえるような対話システムの構築を目指している。今年度は、そのための基礎的データ収集を目的として、研究フィールドである北海道幌加内町の朱鞠内湖周辺において、流域環境に対する住民の環境評価の特徴を調べるためのインタビュー調査を実施した。具体的には、朱鞠内湖周辺の流域環境を構成する森林、農地、水系(湖・川)のそれぞれについて、直接的利用価値・間接的利用価値に対する関心の程度、日常的な活動経験の程度、環境保全活動への参加意図の程度をたずねたほか、流域環境一般に対する関心、地球環境問題一般に対する関心、日常的な環境配慮行動などについて尋ね、朱鞠内集水域在住の人々の同流域環境に対する関心の構造を検討した。その結果、流域環境のさまざまな機能に対する関心はどれもきわめて高く、特に、森林、農地、水系とも「風景やレクリエーションの場の創出」としての機能に対する関心が高いことが見出された。流域環境の機能間の関係については、第1に、環境のある機能に関心が高い人は別の機能にも関心が高い傾向にあり(逆も然り)、第2に、流域環境のさまざまな機能は、「森林の環境保全機能」、「農地・水系の環境保全機能」、「農地の直接的利用」、「水系の直接的利用」などに整理できることが示唆された。来年度は、この調査結果を、ほぼ同一の項目を用いて実施された全国調査中結果と比較して、本研究のフィールドの人々の流域環境評価の特徴をより詳しく検討するとともに、来年度以降予定しているシナリオ・アンケート作成のために活用する。
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