研究概要 |
科学研究費交付期間に、明らかにしようとするのは、以下の2点である。1)集団過程におけるメンバーのコミュニケーション行動の把握。加えて、2)メンバーのコミュニケーション行動を阻害・促進する可能性のある状況的な要因を把握し改善する方略の検証。本研究では、従来のリーダーシップに基づく知見を発展させ、様々な関係の中で集団間の連携が必須となる構図下での集団過程の検討を行う。 具体的には,病院組織を検討対象とした。入院患者を受け入れる病院組織は、24時間シフトを編成するため病棟(集団)内の連携が要求され,同時に患者の症状の変化に伴い病棟間の連携をも要求される特徴的な組織である。加えて、医師や看護師という顕在的なカテゴリー差違だけでなく、経験・勤続年数や性別といった非顕在的なカテゴリー差違が存在し,それらがコミュニケーション不全といった集団過程に大きく関わることが問題視されている組織でもある。 17年度では、予備的検討として,自由記述法を用いた質問紙調査(61名対象)を実施した。これにより、申し送り・カンファレンス以外の業務中,休憩中,および業務外における,同じ病院に勤務する医療従事者間で話す内容を把握した。さらに,病院組織の構造上次の3つのカテゴリーが存在し,集団内・間でのコミュニケーションを促進・阻害する要因となる可能性が見いだされた。1.医療現場全体を包括する「病院」カテゴリー。2.診療部,薬剤部,および看護部といった専門性に基づく「職種」カテゴリー。3.業務上の職場単位である,「病棟」カテゴリー。 これら予備的検討に基づき,看護師495名を対象とする調査を実施し,現在分析中である。上記の3つの組織構造上のカテゴリーへのアイデンティティの高さが,集団内・間のコミュニケーション行動に影響する可能性が示唆されている。本調査結果については,18年度に学会等において発表する予定である。
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