研究概要 |
今年度は紛争解決およびマクロ公正に関する研究文献にあたるとともに、現実の紛争過程の特徴を把握するため、質問紙による意識調査を全国8市町に在住の有権者1,400名を対象に実施した。調査は郵送法により行い、標本抽出は住民基本台帳にもとづき等間隔抽出法(系統抽出法)により行った。調査では、まず公共事業をめぐる利害対立が一般市民にどのように認知されているかをあきらかにするために、Pinkley (1990)やGelfand, Nishii, Holcombe, Dyer, Ohbuchi & Fukuno (2001)の紛争認知次元をもちいて検討した。一般に社会的紛争は、責任の所在(双方に非がある-一方に非がある)、感情の関与(理性的-感情的)、関係性重視の程度(関係維持志向-課題達成志向)の3つの次元にもとづいて認知されるが、とくに日本人においては葛藤の顕在性(顕在-潜在)や義務(他者の義理に報いる-自分の体面を維持する)といった観点から紛争事態を評価するともいわれている。人々がどのような認知次元をもちいるかは、紛争状況に対する公正判断やその後の解決手続きの選好に影響すると考えられる。そこで公共事業をめぐる紛争場面における公正判断をマイクロな分配的公正および手続き的公正、マクロな分配的公正および手続き的公正の観点からおこなわせるとともに、さまざまな紛争解決手続きに対する選好を測定した。今後の分析において、紛争認知次元、公正判断、紛争解決手続きの3者間の関係を特定していきたい。
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