3か年計画の2年目である本年度は出版というアウトプットこそできなかったものの、最終年度の報告書作成に向けて、文献及びデータ収集を中心とした精力的な研究活動を行うことができた。第1の成果は質問紙調査の成功である。新人が一定の経験を積んだ3月に総合周産期母子医療センターの指定を受けた医療機関(大学附属病院を除いた39施設)を対象に、「誕生死」に向き合った際の医療者の専門家及び個人としての行動や感情に関する質問紙調査を実施した。残念ながら依頼の多くは黙殺され、依頼文への回答率は通常の質問紙調査程度であり、この研究課題の困難さを改めて知ることになた。しかしながらその一方、複数部署から協力を申し出てくださった熱心な医療機関もあり、最終的には、研究代表者がこれまでの研究活動で構築してきた医療者のネットワーク、及び、高知・愛媛両県内の開業産婦人科医院を含めた様々な医療機関を対象に、合計567部の質問紙を発送することができ、35%を超える回答を受けることができた。謝礼のない調査としては高めの返送率であり、医療者の期待を感じることができた。この質問紙調査の分析は最終年度である19年度の主たる研究活動となる。第2の成果はこの質問紙調査のベースとなるリサーチクエスチョンの設定と、そのための理論的な枠組みの構築である。これまで継続してきた"非公認の悲嘆"の対人関係に与える影響、特に「喪失を悲嘆する立場が"非公認"」である対人ネットワークメンバーのコーピングに対するこれまでの自他の研究を総合する試みを続けた。そのために文献収集を続け、対人関係研究・心理学・コミュニケーション学の国内外の社会科学系学会のみならず、母性衛生学会などの医療系の学会にも足を運び、現場の医療者の声に耳を傾けることで本研究課題の焦点を定めることができた。またこれに先立つ研究課題以来、共同で研究活動を行うことになった医師・助産師及び喪失体験者との研究会やワークショップで意見や情報を交換することができ、今後の研究活動に向けて心強い支援体制を維持できたことも特筆に値する。
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