平成17年度は、まず第1に大学教員初任者の不安に関する質問紙データについて、因子分析をおこなうことによって整理するとともに、不安高低・サポート高低の組み合わせ別に職務満足度との関連を検討した。その結果、不安が強い際に同僚教員のサポート、先輩教員のサポートが有効であることが示された。さらに、新任教員への個別インタビューもおこなった。 第2に、その成果をもとに、国立T大学において、新任教員に対する授業コンサルテーション活動をおこなった。これは、受講学生へのアンケート、授業観察、授業のVTR撮影、詳細な授業報告書の作成、授業研究会をセットにした実践である。その際に、教員へのインタビューやアンケート調査で当該活動の総合的な評価をおこなったところ、概ね良好であった。授業研究会では、新任教員の授業の優れた点・問題点の抽出、その処方箋の提案などがおこなわれた。なお本活動は徳島新聞(平成18年3月12日付朝刊)において紹介された。 第3に、国立T大学の新任教員対象の合宿型研修「FD基礎プログラム」における各種講演やワーク、模擬授業の立案と実施等といったプログラム内容を所属部局教員と共同で企画開発、実施し、これの評価についてアンケート調査をおこなった。その結果、プログラムへの評価は概ね良好であり、また、それらのプログラムは、全般的に見て、新任教員における教育の質の向上や授業改善(不安の解消、学生対応、教育への姿勢、教育技術、授業準備、他教員との協力)にある程度結びついていると考えられた。一方で、受講後においても、他教員の授業の参観や、授業の共同開発についてはさほどおこなわれていないので、これらをおこなうことが可能な雰囲気作りが今後の課題と考えられた。
|