近年わが国では、キャリア選択に難しさを抱える若者達が増えている。学卒後も不安定就労をつづけるフリーターや、仕事をせず学校にも行かず、教育訓練の機会にも参加しないニート、就職後早いうちに職を退いてしまう早期離職など、いずれも増加の傾向にある。 こうしたなか、大学教育の立場では、学生から社会人への移行を円滑化するための働きかけが、これまで以上に重要であるとの認識が高まり、職業をテーマにした授業を開講するところが増えてきた。しかし我が国では、キャリア教育に関する研究の蓄積が少ないため、各所が行う教育成果を測定・評価し情報を共有するための基盤づくりが遅れている。 本研究は、わが国の若者層のキャリア意識・態度の特徴を検討すること、そして彼等に効果的なキャリア支援の在り方について提言を行うことが主な目的である。初年度となった17年度は、既存の調査研究にあたり若者のキャリア意識やキャリア支援に関する情報収集を行うこと、そして、質問紙を用いた予備調査の結果を分析し、若者のキャリア意識の特徴を明らかにすることが主たる研究活動となった。 今年度の研究によって得られた知見は以下の通りである。現代の若者達は、「受身」、「適職信仰」、「やりたいこと志向」という3つの特徴的な職業意識をもつ。しかし、こうした傾向はすぐさまキャリア不決断などの不適応に繋がるとはいえず一重に否定してしまうべきではない。こうした彼等の志向を活かしながら、現実世界との折り合いをつけるような支援の在り方が大切であると考えられる。具体的には、自己の能力や職業世界を出来るだけで正確なかたちで認識することができるような働きかけが必要と思われる。そのためには、社会・認知的進路理論(Social Cognitive C areer Theory : SCCT)にて提言される個人の認知に着目した働きかけが有効に働くといえよう。
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