保育・教育場面でみられる子どもの語りと自己の構成をめぐって、17年度に実施した研究を基礎として、次の研究を実施した。 (1)児童の日記記録の縦断的検討:平成18年度に中学校3年に所属した協力者3名について、小学校5・6年当時に担任教諭の指導に従って書かれた日記(学校に持参し一部をクラスで共有する)を資料として用い、その中にみられる表現の特徴とその変化に着目しながら、日記の中での子どもの「自己」の構成過程を質的に検討した。3人合計で1500日分を超える日記の全文から、特に学校で出会う友人との関係についての記述を系統的に抽出し、また、当時の担任教諭および協力者への詳細な面接調査を実施し、個々の協力者に固有の語り口およびそこにみられる変化を明確化した。 (2)幼児に対する面接調査:前年度に実施した幼稚園での縦断的な観察結果から、保育における自己の構成と子どもの行為をめぐっていくつかの間いが明確となった(本年度論文化・学会発表を実施)。この問いをうけ、保育園4・5歳児クラスに在籍する園児39名を対象とした面接調査を実施した。特に、子どもの園生活の中で重要性を持つと思われる「性別」「年齢(クラス)」のカテゴリーに焦点を当て、子どもの発達に沿ってその認識がより明確化する過程が示された。 (3)作文・日記・スピーチの指導についての歴史的変遷をめぐる検討:作文・日記指導等の実践者のリーダー的存在となる協力者との意見交換を行い、実践を意義づける教師集団の成り立ちおよびその中の意義づけの歴史的経緯の検討が必要と判断された。そのため、当初検討していた量的調査(質問紙調査)について、面接記録等を用いたさらなる検討および歴史的経緯の検討がより有用と判断し実施を見送った上で、文献を用いて歴史的経緯を跡づけた。
|