これまでのインタビュー調査と分析を通して、1) "相互主観性""社会構築主義的観点""ふるさと性""名のりの形態""宗教"など、在日外国人におけるエスニック・アイデンティティ形成を理解する上で注目すべき視点が見出され、更に、2) これらの視点から捉えられるエスニック・アイデンティティは、個人によってその成り立ちが大きく異なることが見出された。この点に関する一般的な知見を析出するために、平成20年度では、在日外国人を対象とする質問紙調査を実施した。とりわけ、インタビュー調査により、現在の日本での生活に大きな影響を与えることが見出された"ふるさと性"(自身のふるさとについてのイメージや感情)に主眼を置く調査を実施した。まず、これまでのインタビュー調査の結果を精査し、特に"ふるさと性"と他の要因との関係に関する仮説を設定した。仮説に基づき作成した質問紙の内容は、1) ふるさと性の内容(イメージや感情)、2) ふるさと性の現在の日本の生活(人間関係等)に対する影響、3) ふるさとの生活と現生活との比較(どちらに好意的イメージを持っているか)、4) 日本文化と韓国文化への志向性、5) 現在の日本の生活への適応度、6) 自分の国籍等に関するイメージ等により構成される。質問紙調査は日本語版と韓国語版を作成した。質問紙調査を在日韓国人100名に配布し、すでに回収されたデータを対象に、1)〜6)の事項ごとにその内容を分析した上で、各事項の関連性を分析した。
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