本研究の主要な目的は、親と子双方の育ち・育てる(育てられる)関係のなかで、物理的環境、社会的環境がどのような役割を果たしているのかを明らかにすることであった。1年目にあたる平成17年度は、子どもの誕生と成長とともに、親が子どもにモノ環境を整えていく過程を縦断調査から明らかにしていくことが目的であった。名古屋市の保健所が妊娠中の女性を対象に実施しているニューファミリーセミナー(いわゆる母親教室)、ならびに3ヵ月健診のそれぞれの場において、本研究の主旨を説明し、調査への協力を依頼した。その結果、妊娠中の女性5名、3ヵ月検診受診者の母親10名の協力が得られ、これらの方々に半年から1年程度の日記縦断研究にご参加いただいた。子どもはいずれも第1子であった。協力者には日記帳を渡し、毎日、子ども、あるいは子育てのために買ったもの、人からもらったものをすべて記録していただいた。日記帳は1ヵ月につき1冊とし、毎月筆者が家庭訪問をして、1ヵ月分の日記帳を回収し、向こう1ヵ月分の日記帳を手渡すかたちで進めた。家庭訪問の折には、日記帳を拝見しながら、1時間から1時間半にわたるインタビューを実施し、日記に記されたモノがどういう使われ方をしているか、なぜ必要であったかなどを詳しく尋ねた。インタビュー内容はICレコーダーに記録し、あとで文字化することとした。 まだ家庭訪問を継続している方も数名いるが、順調にデータの収集がすすみ、現在文字化の作業を行っているところである。全体に、子どもの月齢や季節変動に応じて、一定の傾向でモノが子育て中の家庭に到来することが示されそうであるが、いっぽうで母親の育児観、価値観に沿った個人差もあらわれそうであり、モノの購入、到来を通じて、子育て期の親の心理に迫ることができるものと確信している。
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