本研究は、母親が育児の中で当たり前に経験する否定的感情として子どもに対する不快感情を取り上げ、不快感情についての語りから第2子誕生前後に起こる家族システムの変化に際し、第1子と母親の関係がどのように変化していくのか、母親はどのように適応していくのかについて検討するものである。 今年度は、第2子妊娠中から出産後1年間の語りについて主に分析した。 第2子出産前後の母親の語りについて分析したところ、妊娠中は"甘え"という"自らに向かう行動"として受け止めていた子どもの行動を、出産後には"わがまま""やきもち"という"子ども自身の行動"として語るようになった。この母親の語り口の変化は、第1子と距離を置こうとする意識の表れであると考えられ、また第1子への快感情についての語りからも、関係の変化(第1子を対象化しようとする姿勢)がうかがえた。 また、縦断研究とはまた別のデータになるが、2人以上子どものいる母親の語りから母親が子どもたちとの関係をどのようにとらえているのかについて検討したところ、子どもが2人以上いる場合母親は子ども同士の関係を年齢や出生順位によって相対化してとらえていた。相対化は上の子は自立した存在として、下の子は未熟で母親の世話が必要であるという、下の子に注意を向ける方向でなされていた。 これらの成果を日本教育心理学会第47回大会および、日本発達心理学会第17回大会において発表した(日本発達心理学会については発表予定)。
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