研究概要 |
本研究は幼稚園5歳児,小学校1年生,2年生の3学年を対象に,2年間にわたり縦断追跡的に自己理解インタビューを行い,小学校への移行期における自己概念に関して(1)子どもの自己描出の量的・質的分析に基づき横断的に把捉された平均的な発達パターンと,縦断追跡的に捉えられた個人内の連続性と変化のパターンの差異を明らかにすること,(2)年齢要因と小学校へ移行という環境要因が自己発達の連続性に及ぼす影響を検討することが目的である。2005年度の第1回目調査(2006年1月〜3月実施)に引き続き,第2回調査を2006年8〜9月に都内の公立小学校2校で行った。対象児は,小学校1年生60(22)名,2年生56(54)名,3年生65(42)名,計181(118)名である(括弧内は縦断調査人数)。質問内容は,(1)現在の自分(いいところ等),(2)1学年前の自分(どんなところが変化したか等),(3)1学年後の自分(どんなところが変化するか等)についてである。さらに前回調査を行った子どもには,前回の調査を振り返る質問(前回次の学年になって変化すると思ったところは変化したか等)を行った。その結果,(1)横断的に把捉された平均的な発達パターンは,これまでの自己概念に関する知見とほぼ同様であり,縦断追跡的に捉えられた個人内の連続性は,3年生でより明確に見られた。(2)第1回目調査と比較した結果,5歳児から1年生への変化では,小学校への移行という大きな環境面での変化があったため,幼・保との違いや,勉強面に関する回答が多く見られたが,1年生から2年生の変化では,環境面の変化に関する回答は減り,性格・態度や能力の変化に関する回答が多く見られたこと,3年生では勉強に関する具体的能力と性格に関する回答が多く見られ,学校生活において勉強での能力の重要性が増加していることがうかがわれた。以上より,子どもの自己概念は,環境変化の多大な影響を受け,学校生活と密接な関連があることが明らかになった。
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