研究概要 |
乳幼児と母親は,どのようにコミュニケーションを成立させているのであろうか。乳幼児は,ことばを獲得する以前から,母親や身近なおとなとのやりとりを成立させている。そのひとつの形式として,本研究では,母親による子どもの「代弁」に着目した。母親は,前言語期の乳児に対して,乳児の意図や行為を「代弁」することで,コミュニケーションを成り立たせている。これまでの研究において,国内の調査で、母親の発話を4つの代弁形式および非代弁に整理し,月齢推移との関連で,検討を行ってきた。そこからは、「代弁」という子どもの声を借りた発話が、英語圏でもみられるという意見をいただく一方で、日本の母親の「代弁」が英語圏の外国と比べて多いのではないかという指摘も受けた。かりに日本の母親に代弁が多いとしても、それが日本の相互依存的な対人関係という文化に依拠するのか、それとも、日本語の主語をあいまいにするという言語体系になるのかについて検討する必要が出てきた。また、そもそも、英語圏には代弁についての明確な数値を表したデータがなく、日本の母親の無自覚に代弁を行っていることを考慮すると、実際には差がないのかについても検討を要する。そこで、本研究では、通文化的な観点からも母親の用いる「代弁」について検討する。 本年度は、ブリスベン(オーストラリア)において、少数ケースについて調査を行った。また、来年度に向けて、フィールドの開拓や調査の調整を行った。
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