研究概要 |
教育や心理学の分野で一般的に収集される階層性を持ったデータに対して統計的な分析を行う際に問題となりうる事柄について,重要な問題ではあるが通常研究者に見落とされがちな点についての問題提起を行うとともに具体的な指針を提供するための基礎研究として,実態調査とシミュレーションによる実験を行った。 1.階層的データの実態に関する調査 教育・心理学等の分野で,現在実際に行われている研究において,データの階層性が生じるようなデータ収集の方法としてどのようなものが行われているのか,また,それらの階層的なデータに対して現状ではどのような統計的分析手法を用いて処理されているのかを調査した。具体的には,研究論文等の文献や学会で報告された研究において,どのような性質の変数をどのような研究デザインを用いてどの程度の規模で収集されているのかということを調べた。 2.二段抽出データの無相関検定への影響に関するシミュレーション: データに階層性が生じる一般的な例として,学校等の集団を単位としてデータを集める二段抽出法によるサンプリングを想定し,そのようなデータに対して通常の単純無作為抽出法を前提とした無相関検定を行った場合の影響をコンピュータシミュレーションの手法を用いて検討した。シミュレーション実験では,母集団全体における変数間の相関関係の強さに加えて,二段抽出によって生じる集団内のデータの「まとまり」や,各集団内での変数間の相関関係の違いなどのモデル化を行った。これらのデータの状態に関する条件のほかに,各集団の規模や集団の数などのデータ収集デザインに関する条件を変化させた人工データを発生させて通常の無相関検定を行い,検定の危険率や検定力に与える影響を評価した。
|