研究概要 |
高校生の性暴力被害の実態に関し、これまでに収集した2,340名(平成14年実施)について、より詳細な分析を行った。すでに実施された調査は、高校生2,346名(女子1,463名、男子883名)であり、言語的性暴力、露出暴露・視覚的性暴力、強制的身体接触、レイプ未遂、レイプ既遂のそれぞれの被害率は男子に比べ女子で有意に高かった。また、強制的身体接触やレイプに関しては、年齢の上昇に伴い被害率が高まっていた。さらに、レイプ被害とPTSD症状の関連も優位に高かった。 本年度は、これらのデータをもとに日本における低年齢時での性被害率とその状況について検討した。結果、中学校以下の年齢時に何らかの性暴力被害を受けたことがある女子は758名(被害率51.8%)、男子は212名(被害率24.0%)であり、とくに見知らぬ他者からの性的な声かけや路上での性器等の露出暴露の被害が多いことが特徴として示された。性器露出の性暴力は、子どもへの加害行為として非常に多いという実態があるにもかかわらず、警察等への通報率は低く、また問題化されにくく、潜在化した性暴力の一つと考えられた。海外の研究レビューでは、露出被害は女子の心理的・社会的発達にもネガティブな影響を及ぼすとの見解も示されており、今後、子どもの発達における性暴力被害の影響と被害後のケア、さらには予防・防犯の視点からの検討が必要といえる。 これらの結果は、近年、わが国において社会的関心が高まっている幼児・児童期の性暴力被害の具体的な取り組みや対応に還元できるものと思われ、次年度以降はさらに被害生徒への心理的影響についての検討を深めていく予定である。
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