平成17年度は、ライフレビューブックを用いた個別回想法が高齢者と介護者との関係形成や介護負担感に及ぼす効果について検討することが目的であった。ライフレビューブックとは、(1)作成者(高齢者)のプロフィール、(2)協力者(職員)のプロフィール、(3)幼い頃、(4)学校に通っていた頃、(5)青年時代から大人への入り口の頃、(6)仕事の思い出、(7)家事の思い出、(8)趣味・余暇活動の思い出、(9)結婚生活の思い出、(10)子育ての思い出、(10)今とこれから、の10のテーマに基づいて個別回想法を行い、語った内容を写真資料とともに書き込む冊子である。(1)、(2)、(10)については必須としてそれ以外のテーマについては、対象者に選択してもらった。各ライフレビューセッションは、1時間以内とした。 グループホームと特別養護老人ホームの職員(3施設)を対象に、ライフレビューブックに関する考え方、作成手続き、高齢者とのコミュニケーション技法の3点について、教育的な導入を臨床心理士が行った。教育的な導入に際しては、コミュニティにおける導入方法を調整するために、職員との交流時間を設定した。ライフレビューブックの作成期間は、2ヶ月間とし、セッションの設定時間や回数については、職員に設定してもらうこととした。ライフレビューブック作成前、作成中、作成後に、臨床心理士と介護教育の専門家を交えた施設内研修を行い、コミュニケーション方法や作成手続きのコンサルテーション、作成後のフィードバックを行った。 セッション前の教育的な段階からライフレビュー作成後にかけて、高齢者への肯定的印象の変化や導入についての課題などが示唆された。介護負担感には変化は見られなかったが、本研究からライフレビューブックを用いた個別回想法によって高齢者が語りにより聞き手が高齢者の生活歴やその背景にある個性を見出し、職員が高齢者への尊厳を認め関係構成に役立つ可能性が示唆された。
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