高齢者の回想法は、認知機能の向上、情報の安定化、自尊感情などの効果が報告されている。本研究では、回想法が高齢者間および介護者との関係構築に及ぼす効果を検討するために、回想法の効果的な方法の開発と対人関係を中心とした効果評価を積み重ねてきた。 本年度は、生活写真(映像)を用いた回想法が、高齢者間の親密性や介護職員との関係に及ぼす効果を検討した。在住地域や年齢によって、回想内容には多様性がみられる。今回は、個人の回想の適合性に合わせた写真図版(映像)を地域コミュニティの高齢者グループに実施した。写真図版は農村の写真(映像)を中心とし、「ふるさと」、「家」、「授業中」、「遊び」、「食べ物・服装」、「家の手伝い」などのテーマを設定した。映像は、液晶プロジェクターによりスクリーンに映し出し、それを刺激として回想を展開した。 各回の回想内容は、内容分析を行った。その結果、映像がないときよりも、映像があるときの方がコミュニケーションが展開されやすいことが認められた。対象者によっても違いがみられ、健常高齢者では、映像をみるだけで回想が促されやすいが、認知症高齢者では、映像内容についての概要の補足的な説明を口頭で、丁寧に伝えることが必要であった。 また、刺激映像は、回想を促進させるために効果的であるが、その映像に限定した階層が展開されてしまう可能性もあり、映像を用いるのは、導入部分のみで、回想と語りが展開しはじめたら、映像から距離をおいたてんかいが重要である。 各回の回想内容や回想時の高齢者の行動特徴より、生活写真は回想を促進し、対人交流を促進させるのに効果的であることが示唆された。生活写真には、同世代の共通イメージが含まれており、そのイメージを賦活させることは、参加者同志の共感を促進することが出来、コミュニケーションを活性化させることができたといえる。
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