軽度発達障害者が苦手とする対人関係の問題は、他者との関わりに留まらず多くの2次的な問題を作り出している。本研究ではそのような2次的な問題への支援について報告した。学校への適応の問題のあるアスペルガー障害のある子ども、自殺企図など精神的な問題が生じたADHDのある子どもが対象となった。深刻な状況にある軽度発達障害者への支援のあり方を考えていくことは意義がある。本研究では、実践を通して彼らの対人関係による問題や精神的な問題を彼らが苦手とする他者との関係性を通して改善していくことを目的とした。そして学校現場への学生支援員の個別支援、集団適応支援、プレイルームでの関わりによる重要な他者との関係性のあり方、関係性のプロセスの検討、関係形成の影響や効果について検討した。その結果、支援者が軽度発達障害者にとって重要な存在となり特別な他者として受け入れられることの重要性、学校への適応支援や精神的な問題の解決へと導く自己肯定感の成長を支えることの効果が示された。 また、軽度発達障害者の学校現場における他者との関係性のあり方について学生支援員を派遣することによる影響および効果の検討から学校の担任と支援員における支援方針についての役割分担が重要であることが示された。さらに役割分担を行う上で、専門機関との連携が必要であることも示された。 学校のある地域によっても文化差があり軽度発達障害者への教育観、その対応に違いが見られた。その対応の相違は特別支援教育の理解や専門性の程度によるものだと考えられ、そのことが前述の担任と支援員との支援感の違いにも影響を与えていると推測された。地域差における支援のあり方の違いは専門性の向上および専門機関との連携の促進が必要であることが推測されたが、今後の検討の課題としたい。
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