研究概要 |
本研究では,うつ病に対する集団認知行動療法プログラムの有効性を検討するため,コントロール研究を行い,プログラム前後における抑うつ症状や心理・社会的機能の変化を明らかにすることを目的とした.平成17年度は,介入群のデータを蓄積するため,うつ病患者10名を対象に,約3ヶ月間の集団認知行動療法(GCBT)プログラムを実施した. 対象者は,広島大学病院精神神経科および他院から紹介されたうつ病患者10名(男性8名,女性2名.平均年齢44.90±6.63歳)であった.1名を除き,9名は薬物療法を併用した.GCBTプログラムは,心理教育セッション2回(各60分),治療セッション10回(1回/週:各90分),計12回(約3ヶ月間)から構成された.プログラム内容はBeckら(1979)に基づいて作成されたプログラムであり,出来事・気分・思考のセルフモニタリング(#1〜#3),思考パターンの分析と望ましい思考の検討(#4〜#6),実生活での練習と再検討(#7〜#9),再発予防のレクチャーとまとめ(#10)から構成された.1グループは患者5名,スタッフ3名で構成した. GCBTプログラム前後における抑うつ症状,心理・社会的機能を評価するため,抑うつ症状の査定としてベック抑うつ尺度(BDI),ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D),社会的機能の査定として,SF-36,非機能的認知の査定として,自動思考質問紙(ATQ-R),非機能的態度尺度(DAS)を施行した.GCBTプログラムの短期的効果を検討するため,プログラム前後の得点を用いて分散分析を行った.その結果,BDI,HAM-D,SF-36「身体機能」「活力」「社会生活機能」,ATQ-R「肯定的思考」において有意な改善が認められた。このことから,GCBTと薬物療法との併用は,抑うつ症状や社会的機能,非機能的認知の改善に有効であることが確認された.
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