研究概要 |
発生学的に脳の一部である網膜が発達しているカエルを用いた前年度の研究成果により,視覚情報が周期的同期発火によって符号化され,実際に脳で解読されていることが,網膜における周期的同期発火の薬理学的操作によるカエルの行動変化によって証明された(Ishikane et al., Nat.Neurosci.2005).そこで,この成果にもとづき,他の動物の網膜における光情報の符号化及び,ゲシュタルト的知覚統合に関与する情報符号化様式を調べるために,様々な動物種の剥離網膜標本に平面型マルチ電極法を適用して基礎的な実験を行った.本年度は遺伝子改変可能であり,基本的なほ乳類であるマウス,および同じく遺伝子改変の可能なゼブラフィッシュの剥離網膜標本を作成し,神経節細胞群から光刺激に対するスパイク発火応答を同時記録することに成功した.一方,カエル網膜を用いた研究も継続した.前年度の研究によって情報を符号化していることが明らかになった周期的同期発火が光刺激のどの様な特徴次元を符号化しているかを明らかにするための基礎的な実験を行った.カエルは黒い物体が接近すると網膜神経節細胞のサブタイプの一つであるdimming detector群において周期的同期発火が観察され,逃避行動が生起する.解析の結果,周期的同期発火の強度および逃避行動の生起率は刺激の大きさと連続性に依存することが分かった.しかしながら周期的同期発火がこれらのいずれの側面を符号化するかは不明である.そこでこの問題点を明らかにするための実験計画を立案し,基礎的な実験を行った.
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