室井(2006、日本心理学会)において、視覚情報にあわせて、聴覚情報を異なる3種類のタイミング(聴覚情報を視覚情報呈示400ミリ秒前、同時、視覚情報呈示400ミリ秒後のいずれか)で呈示し、視覚情報の明るさの判断が、単独で呈示されたときと比べて影響を受けるのかを検討したところ、視覚情報と聴覚情報を同時に呈示した場合に、ターゲットの実際の色よりも明るく判断する誤答がより多く見られた。この結果は、背景色が黒色であったため、色の対比の効果により、ターゲットを明るく判断してしまう傾向が聴覚情報を同時に呈示したときにより強く現れたためと考えられた。今年度の研究では、視覚刺激を処理する際に、聴覚情報の影響により、背景色の影響による誤答がより多く見られるのかどうかについて、さらに詳細に検討した。実験では、黒、白の2種類の背景色を用い、異なるタイミングで呈示された聴覚情報の呈示がターゲットの明るさの判断へどのような影響を与えるかについて検討した。その結果、聴覚情報を視覚情報と同時に呈示すると、視覚情報を実際よりも明るく判断するバイアスは見られなかった。その理由として、室井(2006)では、聴覚呈示されるアルファベットを追唱することが求められたが、今回は母音か子音かを聞き分け、課題を実行するか、実行しないかを選択することが求められただけであったため、聴覚情報の処理の負荷が異なっていた可能性が考えられる。
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