本研究は、有限状態文法として記述可能な歌を生成することで知られるジュウシマツにおいて、系列生成能力が歌に特異的なものか、あるいは歌以外の一般的な反応にも、ヒトと比較可能な論理性や抽象性を有する系列生成を可能にするようなメカニズムがあるかどうか、条件づけによる行動実験と、脳内責任部位を特定するための脳損傷手術を組み合わせて検証することを目的としている。本年度は、ジュウシマツの歌における要素と全体の構造とに対応した系列行動を生成させるため、複数の刺激項目に対して一定の順序を持って系列反応を行うように訓練し、項目間に推移性のような論理性があるかどうか、また、刺激特異的でない抽象的な構造が学習されるかどうか、それぞれ検証するための実験システムの開発を目指した。サルやヒトの認知神経科学的研究において用いられてきている系列反応時間(Serial reaction time)を指標とした実験系をジュウシマツに適用するため、食物を強化子としたボタンつつき反応の形成を行うための新しい装置の開発を行った。先行研究に基づいてジュウシマツのつつき反応の強度を割り出し、従来のマイクロスイッチを用いたボタンではなく、遮光センサーを用いて、非常に小さな力でも反応の検出ができる入力部分と、センサーからの入力をTTL信号に変換させる装置を開発した。この入力検出装置は市販の入出力ボードに接続することができ、このボードを介して汎用のプログラム言語で実験イベントを制御するシステムが確立された。これにより、行動実験のための準備が整えられたため、順次訓練個体数を増やしていく予定である。
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