研究概要 |
本年度は次の3点のことを実施した. (1)自閉症児の特性を捉えるための質問紙の作成:米国PAR社(Psychological Assessment Resources, Inc)の実行機能行動評定尺度(Behavior Rating Inventory of Executive function)と米国Pro・ed社より出版されているアスペルガー症候群診断スケール(Asperger Syndrome Diagnostic Scale)を翻訳し,使用の許可を得た.また,数例について評定を実施した. (2)自閉症,及びアスペルガーの子どもの行動観察:自由遊びや課題中の自閉症児の行動を観察した.課題では,特に,視線理解や簡単な表情理解に焦点をあてた.顔刺激として,市販の表情カード(スクールカウンセリング研究会監修)を一部修正して用いた.アスペルガーの子どもは,キャラクターの示す視線の方向(何をみているか),及び,喜びや嫌悪などの単純な表情を理解できることがわかった.しかし,表情と視線から,キャラクターが「好き」なもの,あるいは「嫌い」なものを推測することは難しいようであった.またキャラクターがみているものをキャラクターが「好き」かどうか,あるは「嫌い」かどうかを判断することも難しいようであった.アスペルガーの子どもは,表情が生起する理由を,視線を参照して推測するといったような社会的参照に大きなつまずきがあることが示唆された. (3)NIRSによる脳機能の測定:成人を参加者として,次の3つの課題による脳機能の測定を実施している:(a)単語読み課題,(b)視線知覚課題,(c)興味の選択課題.単語読み課題では,下前頭回,及び上側頭回の賦活が認められた.視線知覚課題では,すべての対象者ではないが,上側頭回が賦活するケースが認められた.興味あるものの選択においては,前頭野の活性が認められた.
|