(1)地方自治体と公立大学の設置者・大学間の関係構造の法制論的研究については、移行型の公立大学法人化を実施した自治体(北九州市)に赴き、公立大学法人定款立法過程における立法者意思の確認をすすめた。設置者側の検討組織は、理事会と経営審議機関は同一のものと理解して定款作成を進めていた。こうした傾向は他の地方自治体にも共通しており、地方独立行政法人法の規定があいまいなことが地方自治体の多様な解釈と混乱をもたらしていることが明らかになった。 (2)公立大学設置者としての地方自治体の体制の変動については、全国の公立大学を設置する自治体の設置者機能の所在と大学との関係の整理・類型化に力点を置いて研究を進めた。具体的には、公立大学協会・公立大学設置団体協議会等の資料をもとに、近年の地方自治体の公立大学所管部署の変遷について整理した。地方行政改革により頻繁な名称変更等が見られるものの、一部の例外を除いて、公立大学所管部署の規模の拡大、組織上の位置づけの上昇は見られない。地方公立大学政策と公立大学政策は必ずしも関連づけられていないのが実状である。関連して、地方分権についての資料・論文の収集・分析を進めている。 (3)地方自治体による、設置者としての権能を超える高等教育政策の企画者としての体制変動と政策過程研究については、北九州市において、移行前後の制度運用の実態や政策意図について担当部署(産業学術振興局)へのヒアリングと資料収集を実施した。また、私立大学を積極的に誘致している地方自治体(北海道・青森県)の高等教育政策に関する方針、公私協力の状況についての資料収集と実態についてのヒアリングと資料収集を実施した。 (4)以上の研究から得られた知見は、雑誌論文(「分権改革下における地方高等教育政策の展開」『教育政策学会年報第13号』2006年6月刊行に掲載)をとりまとめる際の手がかりとなった。
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