本研究の目的は、活動中心主義の学習論を現代の社会的構成主義(social constructivism)の観点から理論的に強化し、さらに、活動中心主義の学習論の歴史的ルーツである進歩主義教育を、単なる「自然な学び」の希求や子ども中心主義に留まらない遺産を与えるものとして解釈する可能性を探ることにある。このため、今年度は、活動中心主義の学習論の再評価を生み出している現代の社会的構成主義を考察・検討し、活動中心主義の再評価が、ジョン・デューイ(John Dewey)の道具主義を人工的媒介の理論として再解釈する立場からなされている点に特徴があることを明らかにした。また、この人工的媒介の理論を進歩主義教育の解釈枠組みとして適用することで、進歩主義教育への新しいアプローチの可能性を探求した。この成果は、論文「『自然な学び』の論理から『道具主義』は離脱できるか?-現代社会構成主義への進歩主義教育の遺産-」(教育思想史学会『近代教育フォーラム』第14号2005年81-91頁)に著されている。今年度は、新たな理論研究の資料収集と、進歩主義教育に関わる歴史資料の収集のために、関係図書を多量に必要とした。 さらに、人工物と観念の認識論的関係を成立させる要因として排除される傾向のある感情・情念の役割について考察を進め、デューイの道具主義をエロスの概念を用いて解釈した。この成果は、「エロスの教育哲学としてのデューイの道具主義-軟質と硬質の哲学の狭間で-」(日本デューイ学会第49回大会 個人研究発表 鹿児島大学 2005年10月9日)として発表した。なお、本年度は資料収集を目的とした関連学会が東京都内を中心に開催されたため、旅費が低く抑えられたが、膨大な関係図書の資料整理のため、パソコンやハードディスク等の物品を購入した。
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