1.学校改善を目的とする学校評価が公表を前提とするのに対し、資質向上を目的とする教員評価は組織内で自己完結する制度であるというちがいを明らかにしつつ、学校評価も学校経営手段としてのみならず教育実践として機能する可能性を示し、学校づくりの当事者間の対話の中で教員の資質向上が行われる可能性を示した。(論文1) 2.免許更新制は、その時点における最低限度の専門性を裏打ちしたものに過ぎないという限定を制度として明確化するものであり、定期的な資質向上を不可欠のものと把握している点で、よりよい向上を追求する従来の現職研修と制度趣旨が異なることを明らかにし、コツと勘からの脱却の必要性をユタ州の事例から述べた。(論文2) 3.免許更新制や人事考課を含む広義の教員資質向上策が、公務員制度改革の中で過渡期にあるものと位置づけた。そして人事管理としての教員評価と教育実践としての教員評価を区別したうえで、授業評価の中でこそ教員の資質向上と学校評価政策が合流することを明らかにした。(論文3) 4.州レベルでの金銭的報償(メリットペイ)に満足せず、市独自の学校報償制度を上乗せ実施しているテキサス州ヒューストンを訪問し、教員研修セミナーに出席した他、元教育長・教育委員会・教員組合関係者にインタビューを行い、学校間格差のない報償制度の構築という技術面が制度への支持を調達する要因となっていることを明らかにした。
|