研究概要 |
本年度は,昨年度の文献研究および実地調査の結果と,米国の状況を中心に取りまとめた論稿とを踏まえ,特にわが国の小規模市町村教育委員会における政策企画・遂行能力の実態についての調査検討を進めた。近年の市町村教委が直面する深刻な課題の一つとして,学校再編整備の問題が重要視されている現状も明らかになり,特に本研究の中心テーマの一つである政策諸資源の制約状況とその下での政策能力の発揮状況の検討に対して有力な手がかりとなりうるため,当初予定していた学力関連政策に加えて,調査対象の一つとして再設定するに至った。実態調査では4市町教委事務局へのヒアリングを実施した。その結果として,各教委の政策企画・遂行能力については,担当者の個人的な実務能力に大きく依拠することが確認された。その実務能力は,組織内起業的意識(entrepreneurship)とも呼びうるような,担当企画を独自に進める意識を含んだ企画立案型の能力として捉えられること,またそのような担当者の職務経験として,当該市町村の他部局において部局間を横断する連絡調整型(もしくは他の市町村との連絡調整)の職務に携わつた経験のある場合が共通して見受けられること,等も浮かび上がっている。 以上の内容を中心として,O県A市・K県X市の二市の事例をそれぞれ素材とする論考(市町村教育委員会における学校再編計画立案に関する予備的考察,少子化時代における地方教育委員会の政策課題に関する事例検討)を取りまとめ,学術専門誌・学部紀要への投稿を行い掲載されるに至った。
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