学校から雇用へスムーズに移行を遂げるという、戦後の日本型雇用形態の崩壊(乾彰夫によれば「戦後日本型青年期の解体・再編」とよばれる事態)がどのように現れているのかを比較研究によって解明すること、本研究の目的はそこにある。 この目的のため、(1)東京都の若者の、高校卒業後の進路実態を、経年的な聞き取り調査によって明らかにすること、(2)沖縄の若年労働市場の諸特徴と、高校卒業後の若者の聞き取り調査によって明らかにすること、(3)イギリスの中等教育・政策研究との国際比較調査を行うこと、を試みようとしていた。本年度は、これらのうち、とりわけ(1)と(3)の作業に専心した。(3)においては、若年者の支援プログラムを行っているコネクションズおよびキャリアスコットランドを訪問し、ヒヤリング調査を実施している。そのなかで明らかにされたのは困難をかかえる層を把握するために、学校卒業後も引き続き関係を持ちながら、就労支援のみならず、離家に伴う様々な支援を包括的プログラムによって実施しているということである。日本においては、「若年者自立・挑戦戦略会議」の提言をうけて、ジョブカフェなどのワンストップサービスセンターの構築が進められているが、センターを訪れた若者に対してのみのアプローチとなっており、困難を抱える層へのアプローチが脆弱であることが明らかになった。また(1)においては、高卒1年目の調査をまとめるとともに、高卒2年目の調査に着手している。それらの成果の一部として執筆したのが、「研究発表」欄にしめした論考である。
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