本研究は、高齢者向け生涯学習講座の修了生のその後を追跡し、生涯学習講座終了後の社会活動と、修了生自身の生き甲斐やQOLなどとの関連を把握しようとすることを目的とするものである。調査は、M県内にある高齢者(60歳以上)向け生涯学習講座をフィールドとした。この講座では、終了後、同窓会組織だけでなく、修了生の自発的なサークル活動に対して場所・人的資源の提供などの支援を行っている。18年度の主な結果は次の通りである。 (1)修了生が行っている社会活動のなかには、幼稚園や小学校での活動があるが、そこでの子どもとのかかわりは、彼らの世代間伝承への欲求を満たしており、また「子どもから元気をもらっている」という言葉に象徴されるように精神的健康へのよい影響もあるようである。さらに、実際に人前での活動をすることにより、集団としての連帯感が高まり、失敗時にはお互いに支え合いをするなどサークル内での人間関係への肯定的な影響もあるようである。教育機関からの評価も概ね好評であり社会的資源としても十分成り立っているようである。 (2)サークル内での人間関係をみると、元気がよく活動的な女性が中心的な役割を担っており、それを男性がサポートしている場合が多い。その一方で、企業型のリーダーシップを取りたがる男性にはフォロワーが出てこず、結局サークル活動に来なくなることがしばしばである。これは地域社会における男女共同参画を考えて行く場合に非常に示唆的な現象のように思われる。
|