本研究は、戦後日本における普通教育としての技術教育の教育課程に関する歴史的研究として実施しているものであり、本年度は、1958年改定中学校学習指導要領「技術・家庭科」(58年版「技術・家庭科」)のもとでの日本教職員組合及び民間教育研究団体における教育課程の自主的編成の取り組みに関して資料収集及び検討を行った。ただし、計画を一部変更し、次(2006)年度に予定していた1969年改定中学校学習指導要領「技術・家庭科」(69年版「技術・家庭科」)に関しても資料収集及び分析に着手した。この計画の一部変更は、インタビューを予定していた関係者の高齢に伴う体調変化によるものである。 教育課程の自主的編成に関しては、基礎資料の収集をほぼ終えることができた。目下、分析作業に入っており、2006年度に関連学会において口頭発表を行う予定である。 69年版「技術・家庭科」に関しては、69年版学習指導要領を準備した教育課程審議会の議事録、文部省職業教育課課内会議資料(いずれも「鈴木寿雄/技術・家庭科文庫」(開隆堂出版株式会社所蔵))を用いて、その審議過程を分析した(丸山「1969年版中学校学習指導要領『技術・家庭科』の審議過程」『第46回日本産業教育学会大会発表要旨集録』、2005年、38ページ)。検討の結果、69年版「技術・家庭科」は、58年版「技術・家庭科」と比較した場合、社会的生産における技術の教育としての性格が「変質」したとされてきたが、この点に関して、教育課程審議会に先だち文部省は教育課程改訂を審議していたこと、このときの審議で文部省職業教育課主導により家庭科教育重視の方針がとられていたこと、文部省側は教育現場の混乱という名目で技術教育の教育目標に関していわば切り下げともいうべき対応にでたことなどを明らかにした。
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