現在のところ、音楽科・体操科・図画手工科の臨教卒業者への聞き取りは実施できていない。しかし、これと比較することになる他の臨教卒業者については、仙台臨教を中心に調査を実施している。聞き取りを通して、旧制大学と臨教の授業のレベルの違いについて圧倒的な差があり、教員は臨教生徒に適した授業内容を用意していたこと、すなわち中等教員養成の意識をもって授業をおこなっていた点や、学部学生との交流の少なさに比して教授陣とは密な関係があったことなど、これまでの公文書では現れなかった部分が見えてきた。福岡臨教についても、聞き取りができるよう、現在調整中である。また、名古屋臨教と第十四臨教については、対象者がいないことが判明した。ただし、第十四臨教(英語科)については、校友会の協力を得て、当時の情報等についてご存知の方を募る文書(第十四臨教史に関する論考を含む)を会報に掲載していただくことができた。女子の体操科については、お茶ノ水女子大学に同窓会があるものの、残念ながら、個人情報保護の関係で一切情報は入手することができない状況にある。 本年度は、基礎的資料の収集が第一の目的であったので、図書を中心に資料を集めた。しかし、これを具体的に検討するまでにまでは至っていない。ただし、「教育審議会」において体育学を学部として創設する機運がありながら結果が出なかった経緯があり、今後はこうした情勢と、1941年段階で東京高等体育学校や日本体育専門学校が一斉に高等教育機関としての実態を得る状況との両面を俯〓しながら中等教員の需給問題を解明していく必要があると考えている。 また、『学校一覧』や各学校に残っている臨教関係簿冊のマイクロフィルム撮影等は、現在所蔵機関と調整中であるが、来年度に実施できる予定である。東北大学では、すでに業者との間で見積もりもとれている。
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