研究概要 |
本年度は、全国インディアン協会(National IndianBrotherhood)が『インディアン教育はインディアンの手で』(Indian Control of Indian Education,1972)を起草した時期を中心に、先住民族が、教育自治体制の制度的・実態的基盤をどのように形成しようとしてきたのかを明らかにすることを目的として、以下の調査を行った。 1)国立公文書館(オタワ市)において、成人教育、寄宿舎学校の廃止、先住民族居留地の学校委員会(School Committee)に関する公文書を調査、収集した。先住民族が何を教育課題とし、いかなる教育制度・実践を求めたのかについて示唆を得ることができた。 2)ブリティッシュ・コロンビア大学附属図書館(Koerner Library及びXwi7xwa Library)にて、連邦下院議会インディアン問題北方開発常設委員会の議事録(1969年-1973年)、先住民族の政治団体の刊行物、先住民族政策及び先住民族教育に関する新聞記事(Globe and Mail紙、1966年-1972年)を調査、収集した。 3)ブリティッシュ・コロンビア州テラス町を拠点としたフィールドワークを行った。ニスガ民族の居留地では、ニューアイヤンシ・ニスガ小学校の教員、ニスガ教育委員会の言語・文化プログラム・ディレクターに、インタビュー調査を行った。ニスガ民族の教育自治体制の形成過程及び教育自治の今日的課題について、貴重な証言を得ることができた。 以上の資料調査・収集を踏まえ、本年度は、全国インディアン協会の『インディアン教育はインディアンの手で』が起草された時期に、カナダ各地の居留地で、福祉行政に依存しない自立した地域づくりが計画ないし実践されていたこと、このような地域づくり実践の中に、教育自治が位置づけられていたことを明らかにした。この成果は、カナダ教育研究会にて発表した上で論文化した。
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