研究概要 |
子どもたちの人とかかわる力の育ちが危ぶまれている。子どもの社会的発達を支え援助していくこれからの保育者には,専門的知識・技能の修得のみならず,保育者自身の人間性や自我の成長・発達を志向した養成が不可欠である。他方,保育者養成あるいは初任期にあたる青年期後期は,アイデンティティ(自我同一性)獲得という発達上の課題に直面する時期でもある。このような点を踏まえ本研究では次の3点を主な目的とした。(1)養成期から初任期にかけての縦断的調査により保育者のアイデンティティ形成プロセス及び諸要因との関係を明らかにする。(2)保育内容「人間関係」に係る指導力量とアイデンティティ形成との関連を検討する。(3)さらにこれらを踏まえて,アイデンティティ形成を志向した具体的な養成,研修プログラムのあり方を提案する。 本研究の目的に即して本年度は,継続してデータを収集するとともに,公的機関等において文献収集を行った。また既に収集済みのデータに関しては分析を進め,順次,研究成果を公表していった。具体的には,(1)保育者志望学生のアイデンティティ形成過程について継続的に追跡調査を実施した。養成校卒業期のデータについては,重点的に分析を進めた。また入学期から卒業期にかけて,アイデンティティの形成過程を分析した。(2)保育者のアイデンティティと保育内容「人間関係」に関わる保育者効力感が,保育実践に影響を及ぼしているのか検討した。多母集団の同時分析により、初任から熟練保育者に至るまでアイデンティティと「人間関係」保育者効力感との強い関係があり、両者が保育実践に影響していることが実証された。(3)研究レビュー等を目的として国内外の文献を収集した。これらと並行して,データの整理・入力を複数の研究補助員を依頼し進めるとともに,国内の研究者から指導助言を受けることができた。研究成果の一部は,関連学会誌へ投稿し公表を進めている。
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