前年度の研究調査を踏まえ、今年度では来日から今日までの家族構成の変化、移住・再移住・定住の意志決定過程における家族関係及びその役割の変化という二つの要素を独立変数として調査に取り入れた。 今年度は日本に在住する7家族13人、来日した後カナダに再移住した2家族6人、来日した後に中国帰国した5家族7人に対し、インタビュー調査を行った。来日時の家族形態がその後の家族関係の変化に大きく左右することがあるので、三つのタイプの家族を調査対象として選んだ。 合計14家族26人は、(1)夫または妻が単身で来日した後、残りの家族を呼び寄せるタイプ(5家族、内2家族は来日当初子どもがいない。)(2)夫婦が同じ時期に来日し、後に子どもを呼び寄せるタイプ(5家族)、(3)夫婦が日本で出会い、子どもを出産するタイプ(4家族)に分類し、半構成の面接調査を行った。 調査では、(1)子どもの教育に対する意識、戦略。具体的な指導の方法、教育にかかる費用など教育に関わる側面、(2)来日後の夫婦関係、親子関係の変化、役割分担などの家族関係の側面を中心に行った。次に・中国へ帰国した家族、第三国へ再移住した家族と日本で定住した家族の三タイプにわけ、さらに来日時の家族形態を加味しつつ、その相違と相関関係を分析した。 これまでの主な結論として(1)教育戦略における妻が持つ役割が全体的に大きく、またその教育戦略の遂行には妻を中心とした社会的ネットワークが大きく貢献している。(2)夫婦で来日したタイプより、日本で出会ったタイプの家庭は、妻が持つ社会的資本が多い。(3)定住、帰国、再移住の意思決定過程において、子どもの教育が重要な要素となり、またそれによって家族の居住形態に変化が起きている傾向がある。 本年度の研究成果は、雑誌論文以外に、日本華僑華人学会2006年度年次大会において、「移住過程における家族とネットワーク」というテーマで自由研究発表を行った。
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