研究概要 |
1990年代以降、大学は「混迷」の時代に入ったといわれる。政策担当者、大学関係者、企業関係者の間で、大学教育に対して何が期待でき、何を期待すべきなのかについて、コンセンサスを構築することができずにいる。こうした混迷の要因の1つに「大学教育と仕事との関係」という教育の基本問題が解明されていないことが挙げられる。本研究は、こうした観点から、大学教育と仕事との関係を、「大学教育と職場教育の接続関係」という切り口から検討する。分析対象には、仕事に必要な知識や技能が比較的みえやすい「技術者」を取り上げた。研究初年度である2005年度は、以下の点についての研究を行った。 1.技術者6人に対して、大学での経験と職場教育との関係についてグループインタビュー(3人×2回)を行った。また、技術者ときわめて対照的だと考えられる経済学部卒業者3人に対してもグループインタビューを行った。これらのインタビューによって、技術者が大学時代にうけてきた研究室教育と現在の職場訓練との間に共通点が多いこと、技術者の活躍を支える1つのキーワードに大学教育で獲得したプロフェッショナル意識があること、ただし現在従事している職務によって、大学教育に対する見方が大きく変わることなどが明らかになった。 2.これらインタビュー調査から得られた情報に基づいて、大学での経験、現在の働き方、大学教育に対する期待に関する調査票を作成し、関東の国立大学(1大学)の協力を得て、工学系卒業者6,000人を対象にアンケート調査を実施した。回収率は3割であり、現在、データ入力中である。
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