(1)家族会の組織戦略の検討 新しい問題である引きこもりへの支援は、社会的関心の停滞の時期にさしかかり、方針の変更を迫られている。本研究では、家族の立場からの支援活動の組織化に注目し、会の組織戦略に関する検討を行った。関東・東海・関西地方に位置する家族会(NPO法人を含む)へのヒアリングからは、新たな活動の方向性として、就労支援事業の受託や、家族自身による仕事の創出のほか、「社会不安障害」などの概念に基づく医療化の運動などが明らかになった。 (2)引きこもりの改善への影響 家族会が引きこもりの改善にもたらす影響について、東海地方のNPO法人を対象とした予備調査の分析を行った。家族が引きこもりの改善を感じるにあたって、家族会への参加頻度の高さや、引きこもり本人のNPOへの参加がそれぞれ有効であることを確認した。また、本人がNPOに参加している層と未参加の層とでは、家族会から得られる効果や会への要望が異なる。このように多くのNPOでは、家族間でのセルフヘルプ・グループ的な機能と、引きこもり本人に対する支援の機能が混在することが推測される。双方の円滑な連動が課題として浮上した。 (3)質問紙調査への検討 来年度以降に家族会の本格的な質問紙調査を行うことを課題としている。今年度は、ヒアリングと併せて調査対象となる会との交渉を進めた。また組織戦略の検討や予備調査の分析を通じて、質問項目の作成を続けている。
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